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最高裁判所第三小法廷 昭和50年(オ)327号 判決

主文

理由

上告代理人竜前茂三郎、同朴宗根、同杉本良三、同西川茂の上告理由一及び同上告理由補充について

記録によると、(名称略)、宋基復の両名が被上告人財団法人朝鮮奨学会の共同代表理事に選任されていたものと認めるに足りる資料は存在しない。かえつて、同被上告人においては、その寄附行為に定める理事長が選任されていないこと及び(名称略)がその理事であつたことが認められるから、民法五三条の規定により、同人が同被上告人を代表してした所論訴訟代理人に対する訴訟委任は適法なものといわなければならない。論旨は、採用することができない。

同上告理由二について

記録によると、所論の点に関する原審の認定判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同三、四及び五、(二)、(三)について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の認定にそわない事実を主張し、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同五、(一)について

財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定二条二項(a)、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定について合意された議事録二項(c)にいう「居住した」とは、大韓民国の財団法人にあつては、日本国内において、事務所を設け登記をしていることまでは必要としないが、少なくとも事実上の事務所を持ち、その法人の本来の目的とする活動を昭和二二年八月一五日から同四〇年六月二二日までの期間内のいずれかの時まで一年以上継続していることを要するものと解するのが、相当である。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

(裁判長裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己 裁判官 服部高顕)

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